チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地
誰もが楽しめる参加型作品を作るチームラボ
プログラマ・エンジニア、数学者、建築家、CGアニメーター、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、絵師、編集者…。チームラボは、そんな様々なスペシャリストから構成されるウルトラテクノロジスト集団です。と聞くと、「なんだか難しそう」と感じる人も多いかもしれませんが、彼らの作品は実は、大人から子どもまで誰もが楽しめるものばかり。デジタルテクノロジーを駆使して、アートを“見て感じる”ものから“参加し、体感する”ものへと変える集団、それがチームラボなのです。
世界中でアート作品を発表する一方で、チームラボは「学ぶ!未来の遊園地」というプロジェクトを全国で展開しています。コンセプトは、「共創」──子どもたちに、アートに触れながら、共同的で創造的な体験をしてもらうこと。自分が紙に描いた魚が巨大な水族館アートの中で泳ぎ出す様を見ることができる『お絵かき水族館』や、触ると色が変わったり音が鳴ったりするボールを使ってみんなで音楽を奏でる『光のボールでオーケストラ』など、数々の“アトラクション”が楽しめる遊園地は、各地で人気を博してきました。
アートと遊園地を一度に体験できる初の展覧会
チームラボがこれまでに発表してきたアート、そして遊園地を一度に体験できる世界初の展覧会が、日本科学未来館で開催されています。「踊る!アート展」パートで見られるのは、伊藤若冲の升目画と現代のピクセルアートの共通点に着目した代表作『Nirvana』など、全7作。四方を囲む鏡と床にリアルタイムで花が描かれ続ける『花と人、コントロールできないけれども、共に生きる』、アニメーション上の文字に触れるとその文字が持つ世界が映像として現れる『世界はこんなにもやさしく、うつくしい』など、見るというよりも中に入り込んでいくような感覚に陥る作品が並びます。
インタラクティブとは言えない作品群も、ただの動く絵画だと思って見ていると心地よく裏切られます。例えば『花と屍 剥落 十二幅対』では、タイトル通り、画面の中で絵の表面が剥がれ落ちていくのです。剥がれ落ちた裏にあるのは、設計図のような網目状の線の集合体。作品の制作プロセスにある、コンピューター上の3次元空間が垣間見えてくる、というわけです。
作品のコンセプトは「超主観空間」
同じように、『生命は生命の力で生きている』の表面が剥がれ落ちた状態が、『冷たい生命』。これらはいずれも、「超主観空間」──西洋の遠近法とは違う、日本画風の観念的・平面的なものの見え方──とチームラボが名づけたコンセプトに基づいて作られた作品です。代表の猪子寿之さん曰く、チームラボは「デジタルという新たな方法論によって、古来の日本の空間認識の論理構造を模索」しているのです。
と、またなんだか難しそうな話に戻ってしまいましたが、その「古来の日本の空間認識の論理構造は、作品に参加し、体感することと相性が良い」とも猪子さんは言います。つまりはそれが、チームラボが参加型・体感型の作品を作り続ける理由。確かに絵巻にしろ襖絵にしろ、伝統的な日本美術は視点を動かしながら見ることが前提です。チームラボが最新のテクノロジーを駆使して描き出す未来は、私たち日本人が歩んできた歴史の上に立っているのです。子どもたちと一緒に大いに踊り、大いに学んでいるうちに、きっとあなたにも素敵な未来が見えてくるにちがいありません。
文/町田 麻子
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